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伊藤 政幸*
日本ゴム協会誌, 75(2), p.68 - 72, 2002/02
本稿はゴムの網目鎖構造が関与すると考えられる未確定の問題を解明するために、放射線を利用してゴムに切断と架橋とを定量的に制御して加え、得られた試料の物性を測定し、以下の各点を明らかにした。(1)ゴムの破断伸びについて、生ゴムに架橋のみが加えられた場合には、破断伸びは架橋密度の-1/2乗に比例し、Bucheの理論と一致する。しかし切断が併発すると、短鎖網目への応力の集中と切断によって生じたFree endがゴムの伸び配向を妨害し、破断伸びは小さくなる。(2)Moony-Rivlin式のCは弾性項とみなすことができ、Cは網目鎖間分子量の大きな鎖の絡み合いによる二次網目鎖によって発現する。(3)ゴム分子鎖が切断を受け、そこに酸化生成物が付加した場合、誘電緩和時間はFree endの長さが短いほど架橋点の束縛が強く、酸化生成物(極性基)の電場での運動が抑制されて緩和時間が長くなる。